電子申請の利用(準備編)

今国会でのデジタル手続き法案の成立は、印鑑業界の反発という意外な問題で見送られることになったが、すでにいくつかの役所の申請では電子的に行うことができる。役所の電子申請は、電子証明書を使った電子署名の代表的な用途の一つである。

税務申告のe-Taxは、かなり普及している電子申請だが、今回は、法務局の法人登記関係、厚生労働省の健康保険・厚生年金の申請について、電子申請を行ったので、その体験と、明らかになった問題点をまとめることにする。

まずは、準備について。

電子申請では、申請者が電子証明書を用意する必要がある。電子証明書は、申請を行う立場(身分)に合ったものを用意する必要がある。個人では、現在、マイナンバーカード(ICカード)に格納されている証明書を利用することができる。この証明書は発行の手数料が無料という素晴らしいものなので、活用しないのはもったいない。

一般に電子証明書は、発行にかなりの手数料が必要となる。電子証明書というと、Webサーバーで、https を利用するために必要となるサーバ証明書が良く知られているが、この証明書には、サーバーのアドレス (ドメイン名)と所有者などが記載されている。数千円から数十万円の発行料がかかるのが一般的である(現在、Letsencryptという無料の証明書発行サービスが存在する)。電子申請、電子署名で利用されるのは、技術的には全く同じものだが、目的が異なり、人を証明するために、名前と住所、または所属先などが記載されている。発行のためには、所定の手段で記載内容に関する証明を行い、発行が行われる。個人証明書では、認証局に発行のために公的な書類を示して依頼する。一般に1年有効の証明書で、1万円前後の発行料が必要となる。

税理士や司法書士など、会社や個人から申請業務の委託を受けて代行を行う場合には、たとえば、税理士の場合、日本税理士会連合会というように所属団体で発行を行っている。実際には、民間の認証局が発行(署名)するのだが、身分の証明をこうした団体に委任している。

電子申請では、申請に利用できる証明書が決められている。たとえば、法務局の登記関係では手続きによってそれぞれ利用可能な証明書が定められている。

今回は、法人としての電子申請が主なので、法務局発行の証明書を取得することにした(のちに健康保険・厚生年金の電子申請では、個人の証明書が必要であることがわかったが、これはマイナンバーカードの証明書を利用した)。

法務局発行の電子証明書は、法務局に代表者等の印鑑が登録されているものについて発行を受けることができる。印鑑登録と対応しているというわけである。発行には、発行申請書と、印鑑カードを提出して申し込む。発行手数料は、2年有効のもので、15,100円と安くはない。そんなに法人登記を頻繁に行うわけではなく、おそらく有効期間内に1回あればいいほうだが、今回は健康保険・厚生年金関係の申請もあるので、取得した。ともかく、役所の窓口に行かなくていいというのは大きなメリットだ。証明書の発行のためには、法務局の窓口に行かなければならないが、証明書の発行は、15~20分で終わる。実はこれは大きなメリットで、認証局に発行依頼をする場合には、証明書類を添付して郵送したりする手間があるので、2週間くらいかかってしまうからだ。

もちろん、申請を司法書士や社会保険労務士に依頼すれば、証明書の取得は必要ないが、一般にもっと高額な費用を支払わなければならない。電子申請は準備さえ整えてしまえば、紙での申請に比べると圧倒的に楽なので自分(自社内)でできる。

法務局の登記は、登記ネット、社会保険関係などは、e-Gov(電子政府の総合窓口)で行う。それぞれ、ブラウザだけで利用できるわけではなく、専用のクライアントソフトをインストールして利用することになる。

これは、セキュリティ的な問題の対応と、ICカードに格納された電子証明書を利用するためなどの目的がある。ICカードに格納された電子証明書を利用するためには、対応するカードリーダを用意する必要がある。これは、e-Taxと同じなので、e-Tax対応などと書かれているカードリーダを買えば大丈夫だ。

ここまで、準備は完了である。次は実際の電子申請を行う。